2012/06/13

エル・ブリ効果

究極のグルメは余り縁がないが、一職人の興味として先週「エル・ブリ」を観てきた。一年の半分しか営業せずに、閉店中は新規メニューの開発にあてるという。その様子は、まるで化学の実験のようで、液体窒素まで出てきたのにはちょっと驚いたが、元有機化学者の私としてはあまり違和感はなかった。むしろ意外だったのが、日本の和食や文化にヒントを得ている場面がちょこちょこでてきて、日本人としては誇らしく思えた。映画としてはドキュメンタリー風でちょっと固い感じがしたが、最後のメニューの写真は美しかった。もう完全にアートですね。

 
さて20年間使っていたダボ切り用の鋸(写真左)が切れなくなって(理由は恥ずかしくていえない)買った道具屋さんに持っていった。前回は送っていただいたので、今回初めて訪れた。墨田区の井上刃物。ノコをみせた瞬間「どうしたの!?もうだめだね。」色でバレてしまった。ということで新調したのが真ん中の鋸身。前回より価格は4倍以上もする良い物で、ダボ切り用としては勿体無いけれど。エル・ブリを見た後なので?・・・思いきって購入した。すげる鞘用の桐材も譲っていただいた。自分で引き割って仕込んで・・・これだけでも半日仕事かな。いつやろ。
 今回「底さらいのみ」(これもあやまって折ってしまって騙し騙し代用してきた)、と鋭角の部分を仕上げる「鎬(しのぎ)のみ」(こちらもこれまで騙し騙しなんとか「しのい」でいた。)も購入した。あと20年?さらに極めるためには・・・エル・ブリ効果かな。

2012/06/10

ミズナラ柾目のブックマッチ

 これまで何度か登場した樹齢350年超ミズナラ原木Aの柾目板。根元の複雑な模様のところを使って、巾500×長さ1000のリビングテーブルの天板用にブックマッチの木取りを試みた。予想以上の反りとねじれがあり、目標の厚み30ミリのところが23ミリになってしまったが、予想以上のなんともおもしろい模様が出現した。(下の写真の右側)
 ご注文いただいたお客様には悩ませてしまいましたが、厚みが足らないこともあり、別に用意した左側の本命の柾目の虎斑の美しい方でお作りすることになりました。
 しかしこの柾目のブックマッチ、東山魁夷のような、雪舟の水墨画のような、貴重な板であることは確か。こちらも板矧ぎをして、一緒に作ることにしました。
 下の写真は鉋をかけたところです。上の写真と向きが上下逆さまですが、指で示しているラインを境目に、目が完全に逆転していて、かなり気合が必要でした。老けたところは特に難しく、完全に逆目がとれきれませんでしたが、まずまずでしょうか。口の尖った「ドラゴン」かなにかに見えなくもない。
 ところでさりげなくわざとらしく羽織っている上着は、38年前もの。袖口はボロボロになってきたが、型は崩れず、着心地がよく手放せない。高3の時、学校の帰りに一人で寄った、大阪難波の心斎橋のそごうだったか大丸かでやっていたマックレガーのバーゲン。他にオーバーコートとカーディガンを買って、デパートの大きな袋を抱えた自分に違和感を覚えた青い想い出。(もうこれでおしまいにします。はい。) 

2012/06/01

鉋盤の刃の調整

昨日、刃を交換した自動かんな盤、材を削ったところ、左右の厚みにちょっと(0.1ミリほど)差がでる。これまでなんとかやってきたのだけれど、今回は削り肌もちょっと気になるので、ここはちょっと奮起して再度調整を試みた。
 自動かんな盤は回転する鉋胴に3枚の刃を左右均等に全部同じ出っ張りで取り付ける必要がある。一応装置付属のゲージ(左手)を使うと、3枚とも揃うということになっているのですが、実際は、ゲージや刃の取り付けネジの締め付け具合は”手動”なので、なかなかうまく揃わないことがあり、かなり苦労することになる。そんな時はダイヤルゲージの出番となる。0.01ミリまで測れる。鉋胴をそっと回すと、針がその高さをなぞって振れる。3枚の刃の最高点が揃うまで、ネジを緩めてはチェックして・・・左右同時に測れないので、左が揃ったらとおもったら、また右がずれちゃった。ということの繰り返し。ダイヤルゲージが2台あるといいのですが・・・そこまでするか?という費用対効果のいつもの命題に突き当たる。ゲージを置く適当な場所ないという問題もある。3時間くらいかけたところで今回はプラマイ0.02ミリで妥協。ネジ締めの繰り返しのお陰で右腕がダルダル。
 ところで刃を交換したら当然切れ味はいいのですが、3枚揃わないと、返って逆目はとまらないときは逆ショック。少し使っていくと、切れ味は悪くなっていきますが、3枚の刃が揃って、逆目は止まるという悔しいジレンマ。

 さて、さりげなく羽織っているジャージは20歳の時、仕事用に買ったもの、アシックスタイガー製。パンツはその後の学生時代、陸上の練習でボロボロになったが、上着はこのとうりまだ現役。前のチャックが壊れたが、亡き母が交換してくれたので、愛着もある。あの当時で上下12000円ほどしたように思うが、縫製がしっかりしていて費用対効果はもう十分でしょうか。